名古屋地方裁判所 昭和46年(ワ)1442号 判決
原告 奥村初枝
被告 岩瀬まさ子
右訴訟代理人弁護士 宮崎巌雄
右訴訟復代理人弁護士 日浦享
同 軍司猛
主文
一、本件訴を却下する。
二、訴訟費用は、原告の負担とする。
三、当裁判所が昭和四六年六月二四日に当庁昭和四六年(モ甲)第三六五号事件についてなした強制執行停止決定は、これを取消す。
四、前項に限り仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求めた裁判
一、請求の趣旨
1 被告が訴外三輪万一に対する名古屋地方裁判所昭和四五年(タ)第五二号離婚請求事件の和解調書の執行力ある正本に基づき、昭和四六年六月四日に別紙物件目録記載の物件につきなした強制執行のうち同目録記載の一ないし三、六ないし一三の物件(以下「本件物件」という。)に対する部分はこれを許さない。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二、請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二当事者の主張
一、請求原因
1 被告は、訴外三輪万一に対する名古屋地方裁判所昭和四五年(タ)第五二号離婚請求事件の和解調書の正本(以下「本件和解調書の正本」という。)に基づき、昭和四六年六月四日別紙目録記載の物件に対し差押執行をした。
2 しかしながら、右差押物件中、別紙目録記載の一ないし三は原告が滋賀県草津市に居住していた時から所有していたものであり、同六ないし九は、原告が名古屋市に来てから所有したものであり、同一〇ないし一三は、原告の完全な所有に属してはいないが、その所有物件に関しては訴外三輪万一とはまったく関係がないものである。
よって、原告は被告が右物件についてなした右差押執行の排除を求める。
二、請求原因事実に対する認否
1 請求原因1は認める。
2 同2は否認する。
三、被告の主張
訴外三輪万一は、名古屋地方裁判所昭和四六年(フ)第七九号破産事件において同年九月一七日午前一〇時破産宣告を受け、破産管財人弁護士清水英男は、別紙目録記載の物件につき名古屋地方裁判所執行官西原悦範をして封印をなさしめた。
よって、原告が排除を求めている強制執行は右破産宣告によって失効したから原告の本訴請求は失当で棄却されるべきものである。
四、被告の主張事実に対する認否
全部認める。
第三、証拠≪省略≫
理由
被告が、訴外三輪万一に対する本件和解調書の正本に基づき、昭和四六年六月四日別紙目録記載の物件に対し差押執行をなし、三輪が同年九月一七日午前一〇時同裁判所において破産宣告を受けたことは、当事者間に争いがなく、本件記録によれば原告は昭和四六年六月二四日受付の訴状により本件物件が原告の所有に属するとして本件第三者異議の訴を提起したものであることが明らかである。
しかしながら、右事実によれば被告は本件和解調書の正本に基づき昭和四六年六月四日債務者三輪に対し本件物件につき差押執行をしたが、同年九月一七日午前一〇時に同人が破産宣告を受けるに至ったのであるから、本件物件は破産法第七〇条にいう破産財団に属する財産となったもので、被告の右差押は同条により破産財団に対しては効力を失ったものというべく、右差押執行の排除を求める本件第三者異議の訴はその利益を欠き不適法として却下を免れないものというべきである。
よって、原告の本件訴を却下することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条強制執行決定の取消およびその仮執行の宣言につき同法第五四九条第四項、第五四八条第一、二項を各適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 小林真夫)
〈以下省略〉